ハッシュハッシュ・イレイザー
 広い世界の果てがどこまで続くのかわからないように、この恋物語もいつまで続くのか誰にもわからない。

 それは極秘にいつか消されてしまうのかもしれない。

 その時がもし来たとしても、それも悪くないと思えるから不思議だった。

 例えそこに悲しみの涙が流れたとしても、後悔はしない。

 この恋物語に巻き込まれた者もまた、時が来れば必ず懐かしいと心震わせて真理を思い出す。

 人は皆、色々な思いを上書きして、そして時を過ごしていく。

 想いは一つの黒板のように、何度も何度も書いては消してを繰り返す。

 そこに見えなくとも、築き上げてきた想いはいつまでも残って意味を成し、涙の痕ですら、うっすらと染みついたままに存在していることだろう。

 そして手にはイレイザーを握りしめながら、それが汚れたところで、叩いてほこりが飛んだところで、気にせず次の将来のためにと繰り返し使う。

 それは極秘に自分だけが築き上げる未来を変える道具として──

 真理と係わったものは、真実をいつまでも胸に秘めて、一歩前を踏み出す。

 辛い失恋も悪くはなかったと、笑って語れるその時に向かって、少女たちは大人になって行く。

 ただ真理に会えないのが寂しい。

 真理を思い出した時は一輪の白いバラを部屋に飾る。

 『私はあなたに相応しい友達でしたか?』──と問いかけると、そのバラは暫くずっと白いまま輝いているように見えた。

 それを見ると、皆笑顔になり、そしてその人なりに、精一杯毎日を過ごしている姿がそこにあった。
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