ハッシュハッシュ・イレイザー
 次の日から、紫絵里は優介の隣で過ごすことになるが、物おじしない優介は積極的に紫絵里に話しかけていた。

 一度話しかけられば、紫絵里との距離は縮まっていくように、二人は全く知らない仲じゃなくなっていく。

 また、真面目な紫絵里は優介にも都合がいい。

 宿題はきっちりとこなし、予習も怠らず、無難に勉強をしているその様子は優介にも伝わる。

 だから授業中、優介が当てられて、返答に困っている時、紫絵里はさりげなく答えを教えてあげていた。

「ありがとな」

 椅子に座ると同時に、紫絵里に身を寄せて、小さく囁く優介の声が、紫絵里の耳にさらりと届く。

 紫絵里はくすっと笑いを漏らすように微笑んでいるのか、肩が少し上下した。

 その姿は、一番後ろの席にいた真理の視界にも入っていた。

 まだその時は虚ろに二人を見ていただけだった。
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