ハッシュハッシュ・イレイザー
 優介のバランスのとれた整った顔は、見る者の好みのツボを突き、すぐに気に入ってしまう。

 その顔で笑顔を見せられ、あれだけ親しげに話しかけられたら、勘違いしてもおかしくない。

 もしかしたら、自分の事を気に入ってくれたのかも。

 淡い期待と自惚れ。

 優介との楽しいおしゃべりは、夢見心地に仄かな恋心へと変わっていく。

 紫絵里のそんな気持ちが、手に取るように真理には見えていた。

「えっと、お前の苗字なんだっけ。なんか覚えにくいんだよな」

 真理を見て、優介が首を傾げた時、再び紫絵里は高揚する。

 自分はすぐに名前を呼んでもらったが、真理の名前は心の片隅にもなかった。

 喜びたいような優越感が現れた。

 だが、その直後、それがすぐに崩れた。
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