ハッシュハッシュ・イレイザー
「下の名前が真理ってだけはわかってるんだけど。それじゃ、俺も真理って呼んでいいか?」

「えっ、ええ、かまわないけど……」

 気さくな優介にとって、名前なんて上も下も関係ないのかもしれないが、堅苦しい苗字を呼び捨てにされるよりも、下の名前を親しく言われる方が特別な響きに聞こえてしまう。

 その違いを電波が伝わるごとく感覚で受け取り、紫絵里の体にぐっと力が入って顔がこわばった。

「真理、お前さ、どこか悪いところあるのか?」

「えっ?」

 突然何を言い出すのか、突拍子もない質問に真理はびっくりしてしまった。

「どうしたの松永君、そんなに真理の顔色悪い?」

 紫絵里は、真理の色の白さを下げるように扱い、しれっと間に入ってきた。

 真理の肌は確かに青白く見えるが、肌理(きめ)の細かい陶器のような白い肌でもある。

 優介は、困惑している真理の顔をまじまじとみながら、その白い肌に今更気が付いた様子だった。
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