ハッシュハッシュ・イレイザー
「いや、俺は別に肌の事を言ったんじゃない。確かに見ようによったら白いから病弱に見えるかもしれないけど、よく見たら色白ですごい肌がきれいなんだな」

 真理を褒めた言葉は紫絵里の心を突き刺す。

 自分の友達なのに、この時はそれがとても邪魔になるくらい、忌々しい苛立ちが心に現れた。

「それじゃ、なんで悪いところがあるなんて、真理に訊くのよ」

「いや、ちょっと病院で見かけた事があったんだ」

「病院?」

 紫絵里が繰り返す。

 そして真理をメガネを通して冷たく一瞥した。

「えっ、私、その……」

「あっ、そうだよな。ごめん。そんなプライベートな話、質問するのが野暮だよな。すまない」

 優介の方が慌てだした。

「だけど、病院で見かけたって言ったら、松永君もそこに居たことになるけど、松永君こそ、どこか悪いの?」

 メガネの奥から、先ほどとは違う緩和された紫絵里の心配する眼差しが注がれる。
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