ハッシュハッシュ・イレイザー
「俺もちょっと怪我しちゃってお世話になったんだ。それでその時、真理によく似た女の子と廊下ですれ違ったんだ。覚えてないかな?」
苗字を思い出せない代わりに、優介は『真理』と遠慮なく名前を呼び捨てにしている。
真理は何も言わず、ただ視線定めないままに、瞳が不安に揺れていた。
「きっと見間違えたんじゃないの? 知ってたらお互いはっとするだろうし」
紫絵里は不穏な空気が入り込んだように、優介と真理を見比べていた。
「それが、入学する前だから、まだその時はお互いを知らなくてさ、俺も後から気が付いたんだ。そういえば病院の廊下ですれ違った子に似てるなって。声かけて確かめるような話でもないし、まあ、瀬良と同じ席になったしさ、その繋がりでちょっと訊いてみただけなんだ」
「それで、それは真理だったの?」
紫絵里は真理に視線を向けた。その目つきは少しイライラしていた。
「それ、私じゃないわ……」
弱弱しい声で真理は言った。
「なんだ、やっぱり人違いか。だけど、良く似てた。教室で真理を見たとき、なんだかハッとしたくらいだった」
優介の見つめる目が真理にくぎ付けになっていた。
「他人の空似ってあるんだね。もしかして、それ幽霊だったりして。ほら、真理はなんとなくホラー映画に出てくる主人公にも見えなくないかな」
紫絵里はこの場の雰囲気を変えたくて、大切な友達を下げてまで茶化そうとする。
苗字を思い出せない代わりに、優介は『真理』と遠慮なく名前を呼び捨てにしている。
真理は何も言わず、ただ視線定めないままに、瞳が不安に揺れていた。
「きっと見間違えたんじゃないの? 知ってたらお互いはっとするだろうし」
紫絵里は不穏な空気が入り込んだように、優介と真理を見比べていた。
「それが、入学する前だから、まだその時はお互いを知らなくてさ、俺も後から気が付いたんだ。そういえば病院の廊下ですれ違った子に似てるなって。声かけて確かめるような話でもないし、まあ、瀬良と同じ席になったしさ、その繋がりでちょっと訊いてみただけなんだ」
「それで、それは真理だったの?」
紫絵里は真理に視線を向けた。その目つきは少しイライラしていた。
「それ、私じゃないわ……」
弱弱しい声で真理は言った。
「なんだ、やっぱり人違いか。だけど、良く似てた。教室で真理を見たとき、なんだかハッとしたくらいだった」
優介の見つめる目が真理にくぎ付けになっていた。
「他人の空似ってあるんだね。もしかして、それ幽霊だったりして。ほら、真理はなんとなくホラー映画に出てくる主人公にも見えなくないかな」
紫絵里はこの場の雰囲気を変えたくて、大切な友達を下げてまで茶化そうとする。