ハッシュハッシュ・イレイザー

 紫絵里が瑠依に絡まれた事、紫絵里の願い事、優介の事を好きになるなと釘を刺された事、そしてあの石の事。

 真理はもやもやとした感情を抱き、落ち着きをなくしていた。

 小さなさざ波が次第に大きく揺れてうねるように心に溢れてきている。

 それを必死に抑えようとしていても、紫絵里が見せたあの石のせいで、気持ちが激しく揺れ動いていた。

 心乱されている真理のその傍で、マリアは静かにじっと様子を窺っているが、あからさまに様子がおかしい真理に敢えて口を閉ざしているようだった。

 真理とは常に顔を合わせ、二人は狭い部屋を共有しているため、どうしてもその存在は無視できない。

 狭い空間で、マリアが不自然に沈黙を守り、口を開かない方が、真理には居心地悪かった。

 自分の心を見透かされないように、冷静を保ちながら真理は、敢えて切り出す。

「言いたい事があるんだったら、はっきりと言ってくれてもいいのよ、マリア」

「ううん、別に何もないわ。それよりも、真理、あなたが心配」

 首を横に振り、消えゆきそうな声でマリアは言った。
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