ハッシュハッシュ・イレイザー
 紫絵里が描いたあのハートは、優介に向けた熱い気持ちを表したもの。

 それを見るだけで、心にある思いが飛び出しそうに、真理の胸がズキンとする。

 真理の心の痛みを添えたその思いは一体誰のために注がれるのだろか。

 それともちゃんと行き場があるのだろうか。

 無駄に流れて、巻き散らかされないだろうか。

 まるでむやみに傷ついて、ほとばしる血が飛び散っていくさまが見えるようで、真理はざわめきを抑えるように自分の腕を抱え込んだ。

 黒板のハートを見つめながら、真理の足はそこに向かっていく。

 憑りつかれたようにそれを見つめていた目は、虚ろに陰るも、真理の憂いなその表情は美しかった。

 苦悩した想いと、熱い秘めた愛。

 反発しあって、まるで火花が飛び出して心の奥でスパークする。

 それは一瞬で燃え尽きても、焦げ付きは消えないままに無数に点々と残っていた。

 思いが強ければ強いほど、激しく黒い染みが増えていく。

 最後には漆黒に包まれ、炭になり代わるのかもしれない。
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