ハッシュハッシュ・イレイザー
 迷って、抵抗して、そして見て見ぬふりをしようと、自分で抑え込んで誤魔化し、表面だけは取り繕って笑顔で忘れようとする。

 答えがわかっていても、考えないように、押し込められるだけ今は封印していたい。

 気を取られて、心ここにあらずになりながら、真理は自分で作った迷路の中にわざと迷い込んでいた。

 雨雲と降り続く雨のせいで、充分な明かりが届かないその湿った教室の中、思いつめたエネルギーの強さが、色白の真理を淡く浮かび上がらせている。
 
 開けた窓から聞こえてくる控えめな雨音。

 時折、風でガラスに叩きつけられている雨の滴。

 湿った空気と混ざり合った、教室のぼやけた匂い。

 自分の今の想いに似たものを全身で感じていた時、真理はチョークを手にして心の想いのままに手を動かした。
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