ハッシュハッシュ・イレイザー
 一時は観覧車から優介と降りてきて衝撃を受けたが、真実を知ると、あの時の状況がとてもよく呑み込めた。

 あれは事故に巻き込まれたのが原因ではなく、優介に振られたからショックを受けて、それで友達の元に走って泣きついていた。

 全ての事情を呑み込んだ紫絵里の優越感に浸った笑顔が、真理の瞳にも映っていた。

 厭らしいむき出しの欲望がギラギラして、真理はそれを見るのが辛かった。

「ねぇ、瀬良さん」

 中々話そうとしない紫絵里を、小泉ミナミは急かした。

「ちょっと、勘弁して」

 嫌気になりながらも、隠せない気持ちでにやついた紫絵里の顔は、小泉ミナミに付き合っていると思わせるには充分だった。

 小泉ミナミを置き去りにして、紫絵里は自分一人だけ教室に入っていく。

 真理は最後まで何も言わず後をついていくだけだった。

 紫絵里は自分の席につき、鞄から何かを取り出してそれを掌の中でぎゅっと握っていた。

 何をしてるか、真理にはすぐに気が付き、紫絵里が握っているものを取り返したい気持ちに駆られた。

「紫絵里、あのさ」

 しかし、紫絵里は真理を無視して、ぶつぶつと何かを唱えて祈りを捧げている

 紫絵里の手元を見れば、その握り方で、石は初めて見た時よりも、大きくなっているように思えた。
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