健診診断と恋と嘘
慌ててハンカチで涙を拭うけど、一度流れ始めた涙はなかなか止まってはくれない。
「ねえ、弓野ちゃん。弓野ちゃんはその、小塚さんの事が好きなんじゃないの?」
高倉さんにそう言われて、私は首を横に振る。
好きなわけ、ない。好きになんて、なっちゃいけない。私にはそんな権利はない。
小塚さんみたいな人が私みたいなのを好きになってくれるわけがないし、好きなんてそんなことはきっと許されない。
好きだと認めるのも苦しいし、それを否定するのは痛くてもっと苦しいけど、それを認めてしまったら私はきっともうダメだから。
この痛みと苦しみは嘘をついていた罰なんだ。
「なかなか頑なだね。じゃあどうして泣いてるの?」
高倉さんが眉を下げてため息をつきながらそう私に聞いてくる。
「私涙腺が人より弱いんですよ、きっと。
小塚さんが好きだから泣いてるわけじゃないんです。
感動的なCM見て泣いちゃう時ありますし。でもすぐ止まりますから。
特にイケメンに抱きしめられたりしたら、ピタッと止まるんですよ。イケメンパワーすごいですよね」
小塚さんに抱きしめられると涙がすぐに引っ込んだことを思い出してそう言う私に高倉さんは困りきった顔でため息をつく。