健診診断と恋と嘘

「いや、ちょっと離れようか。困るからさ」


結城さんの同僚だからか遠慮して無下にも出来ないであろう旦那さんが戸惑いの声をあげる。


「大丈夫です。涙も鼻水もつけないようにしてますから」


そう言った私に結城さんの旦那さんが呆れたようにため息をついた。


「いや、そういうことを言ってるんじゃないから。千紗から聞いてたけど、確かにちょっとずれてんね。ねえ、千紗、ほんとこれ何?」


あら、ずれてるって……結城さんたら家でどんな話してるんだろう。ちょっと気になりますね。


「んー、ちょっとした実験。弓野さん涙止まりそうです?」


結城さんにそう聞かれるけど、全然止まらない。


むしろ何か小塚さんのぬくもりが恋しくなっちゃって余計悲しくなってくる。


「ダメだ、止まんないです。ご協力ありがとうございました」


ずずっと鼻を啜りながら結城さんの旦那さんにお礼を言うと結城さんの旦那さんは眉間にシワを寄せて私を見る。


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