健診診断と恋と嘘

「何、そのガッカリした顔。何かムカつくんだけど。何なの? 本当に」


眉間にシワを寄せてイラッとしてるのを隠しもせずに説明を求める旦那さんに私は実験の趣旨を説明する。


「いや、すいません。私、かっこいい人とかわいい子が好きなんですが、かっこいい人に抱きしめられると涙が止まると思ってたんです。だけどかっこいい人だからじゃなくて、その人が特別だったみたいです」


そう言うと結城さんが私の事を覗きこんでにっこりと微笑む。


「そうですよ。小塚さんが特別だからそうなるんですよ」


小塚さんが、特別。


そう思ったらまたぶわっと涙が溢れてきて、私は顔を覆った。


私に微笑んでくれた笑顔を、少し意地悪に笑う顔を。


煙草を吸う横顔を、私の作った料理をおいしいって綺麗に食べてくれる姿を。


章に怒ってくれた顔を思い出して胸の奥がぎゅうっと締め付けられるように痛んだ。





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