健診診断と恋と嘘

「小塚課長って製造一課の課長さんですよね。
俺、友達がいますけど……すごい仕事できて厳しいけど懐も深くて顔だけじゃなくて内面もかっこいいって言ってました。
かなり尊敬されてる人らしいですけど。すごいっすね、そんな人落とすとか」


またかえちゃんにべったりくっついてる平根くんが私を見て感心するようにそう言う。


かえちゃんももう抵抗するの諦めたみたいで平根くんの腕の中で大人しくしてる。


落としたというか、落とされた気がするんだけどな。見事に好きになってしまったわけだし。


小塚さんが私を好きになるとか、全然想像できないけど。


結城さんの旦那さんの話を聞いてますますそう思う。


そんなすごい人が、わざわざ私みたいなのを相手にするとは思えないな。


そう思っていると、高倉さんの家のチャイムが鳴って私はビクリとする。


「あ、来たかな」


そう言って玄関に向かう高倉さんの旦那さんの背中を見送って、ドキドキしすぎて壊れてしまいそうな心臓の音を聞きながら私はごくりと唾を飲み込む。


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