健診診断と恋と嘘

お昼ご飯を食べ終えた私はあの人、小塚さんに連絡するべく体育館を出た。


渡されたメモを見ながら携帯電話を操作してあの人の番号を押す。


うぅ、ドキドキする。何でだか分からないけどドキドキしすぎて番号を押す手が震えちゃう。


携帯を耳に当てて何回目かのコールの後、小塚さんは電話に出た。


『……もしもし?』


よく響く低い声が、身体の芯に響いてビクッと身体が震える。


さっきも思ったけど……私この人の声すごく好きだな。


低音で、少し掠れててちょっと電話で話すと耳元で話されてるみたいだヤバイ。


失敗したな、メールにすれば良かった。何で私電話にしたんだろう。


「あ、の……弓野です。これ、携帯の番号なんで」


急いで電話を切ろうとする私に電話の向こうの小塚さんが笑ったのが分かった。


『待ってよ。朔ちゃん、今、外?』


「外、ですけど……」


さすがに職場の皆さんの前で健診先のお客さんに電話するわけにはいかないからね。


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