健診診断と恋と嘘
「う、うちの旦那さん、いつも帰りが遅いので……」
うわ、何か虚しいわ。いもしない旦那のことを妄想してるみたいで大分痛い女じゃない、私ったら。
『そうなんだ。何の仕事してるの?』
え、ど、どうしよう。そんな細かい設定まで考えてませんでしたよ。
「病院の……り、理学療法士で。カルテの整理なんかで大変みたいです」
とっさに口から出たのは別れた元カレの職業だった。
嘘をつくときはほんの少しの真実を混ぜるといいとかいうけどとっさに出るのが真実なだけなんじゃないのかな。
『へえ、同業者さんなんだ。いいね、朔ちゃんの手料理毎日食べられるなんて羨ましい。すげぇ旨そうだし、俺が食いに行きたいくらい』
そう言われてちょっと嬉しくなってしまう。