彼が残してくれた宝物
「しかし、若い女性がバーボンのストレートって珍しいよね?」と、彼は言う。
確かにそうかもしれない。私の周りの女の子もバーボンのストレートなど、好んで飲む人は居ない。むしろみんなお洒落なカクテルを飲んでる。
「甘いカクテルとか、飲んでる方が可愛いですか?」
「別にそんなふうには思わないよ? ただ、いつも楽しんでる様には、見えなかったから?」
いつも?
前にも、私を見かけたっていう事?
私は全然気が付かなかった。
いつも私はこの席に座り、あの日と同じバーボンのストレートを一人で飲んで、彼とのあの日を思い出していた。
忘れて前へ進もうと、なんども恋愛をしようと思ったけど、出来なかった。
友達に男友達を紹介されても、二回と会うことはなかった。
いつになったら…
彼を超える人に会えるのだろう…
いつになったら…
彼を忘れさせてくれる人に、会えるのだろう…
いつになったら…
この罪悪感から、逃れる事が出来るのだろう…
覚悟していた恋なのに…
私は一人だけ罪から逃れようとしてる…
ごめんなさい…