彼が残してくれた宝物

「しかし、若い女性がバーボンのストレートって珍しいよね?」と、彼は言う。

確かにそうかもしれない。私の周りの女の子もバーボンのストレートなど、好んで飲む人は居ない。むしろみんなお洒落なカクテルを飲んでる。

「甘いカクテルとか、飲んでる方が可愛いですか?」

「別にそんなふうには思わないよ? ただ、いつも楽しんでる様には、見えなかったから?」

いつも?
前にも、私を見かけたっていう事?

私は全然気が付かなかった。
いつも私はこの席に座り、あの日と同じバーボンのストレートを一人で飲んで、彼とのあの日を思い出していた。

忘れて前へ進もうと、なんども恋愛をしようと思ったけど、出来なかった。
友達に男友達を紹介されても、二回と会うことはなかった。

いつになったら…
彼を超える人に会えるのだろう…

いつになったら…
彼を忘れさせてくれる人に、会えるのだろう…

いつになったら…
この罪悪感から、逃れる事が出来るのだろう…

覚悟していた恋なのに…
私は一人だけ罪から逃れようとしてる…
ごめんなさい…



< 12 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop