彼が残してくれた宝物
「ねぇ? 俺と付きあわない?」
「はぁ?」
「だって、彼氏いないでしょ?」
いないでしょ?…!?
「なんでいないって、断定なんですか!?」
「だって彼氏がいたら、金曜のこんな時間に、バーボンのストレートなんて、飲んでないでしょ?」
そんなの偏見! と、言うと、彼はそうかな? と、言う。
なにこの男!?
ちょっと格好良いからって、誰でもあんたに靡くと思うな!!
私はミントジュレップを飲み干し、鞄から財布を取り出すと、彼は「奢るよ?」と、言った。
「けっこーです! あなたに奢られる筋合いではありませんから!」
私は、マスターに声を掛けて立ち上がった。その時、クラっとして、あっ! と、思った時には、私は、彼の腕の中に居た。
今朝から体がだるかった。
夕方、頭痛が酷くなり、薬を飲んだのがいけなかった。
いや、薬を飲んだのに、お酒を飲んだのがいけなかった。
「大丈夫か?」
声を掛けてくれた彼に、大丈夫と言いたいが、とても大丈夫じゃない。
「タクシー… お願い…」