彼が残してくれた宝物

そして樋口さんは、おにぎり作っといたから、と言って出掛けて行った。

至れり尽くせりで、本当に申し訳ない。
イケメンで料理も出来て、部屋もスッキリ片付いているし、多分仕事も出来るんだろう。

あれはそうとうモテるでしょ?

失礼かと思ったが、私は部屋を見渡した。そしてボードの上に置かれた写真立てに、目が止まる。

おっ! 彼女か?

写真には、今より少し痩せている樋口さんと、年配の綺麗な女性が写っていった。

綺麗な人… 樋口さんって熟女好き?
でもこの人、樋口さんにどことなく似てる。
もしかして、お母さん… かな?

私は写真立てを置き、部屋の窓を開けた。

今日は雲ひとつ無い晴天。

「んーいい天気。」

私は両手を上げ、大きく伸びをする。

「こんな日に寝てるなんて勿体無い!」

特に汚れているわけじゃないけど、一泊一食の恩義!
部屋の掃除でもしますか?
私の場合一泊どころじゃないしね!
さてさて、先ずは拭き掃除を!

棚や床、窓まで曇りなく磨く。

「あっシーツ洗わなきゃ!」

ベットのシーツを剥がし、洗濯しようと脱衣所へ持って行く。
すると、私がお風呂へ入るだろうと、予測しての事だろう。バスタオルと着替えが、置いてあった。

「何処まで気が利く男だ? これなら、いつでもお婿さんに行けますよ?」

あれ?
樋口さんって独身だよね?

それとも単身赴任で、地方に奥さんや子供が居るとか? …無いよね?
もし居たらこの状況絶対ヤバイし! ってか、奥さんじゃなくて、彼女でもそうとうヤバイよ?
早々に退散しないと…

取り敢えず、お風呂使わせて貰おうっと!


お風呂に入った後は、勿論、お風呂掃除も済ませておく。お風呂を出て洗濯の終わってるシーツをベランダに干し、時計を見ると10時を回ったところだった。

「…なんか疲れたぁ…」

私はソファーに倒れこむ様に横になった。





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