彼が残してくれた宝物

『サクラ…』

か…ちょう?…

『こんな所でなにしてる?』

課長…ごめんなさい…私…

奥さんに頼まれたのに…

ごめんなさい…ごめんなさい…

「おい! 寝ぼけるな! コスモス起きろ!」

え?

「樋口さん?」

「お前こんなところで何やってるんだ!? 夢なんか見て、泣いてんじゃねーぞ! しっかりしろ!!」

樋口さんはきつい口調だけど、私の頬を伝う涙を優しく拭ってくれる。

私… 伊藤課長の夢、見てたんだ…

「あれ? 樋口さん仕事は?」

「終わって、帰って来たんだ!」

窓の外は既に暗くなっていて、部屋の時計の針は20時を指していた。

ヤバッ 私どんだけ寝てたのよ?

「あっ洗濯物!」

洗濯物を取り込もうと、慌てて立ち上がったら、一瞬フラッとした。

あっ立ち眩み…

低血圧の私は、急に立ち上がると、よく立ち眩みを起こすのだ。

「大丈夫か?」と、ちょうど良く樋口さんが支えてくれた。

「うん、いつもの事だから大丈夫。」

「お前、体熱いぞ? 熱上がってるだろ?」

え?

「何考えてるんだ! お前は!?」

お前って…
樋口さんにお前と言われる様な、仲じゃないと思うけど!?

「大人しく寝てろと言っただろ!? 洗濯なんかして! …お前掃除もしたな!?」

掃除して怒られるって、なんか理不尽じゃない?
そりゃー勝手な事をしたのは悪いけど、そんなに怒んなくても良いじゃん!

樋口さんは座ってろと言って、ベランダの洗濯物を取り込み、ベットにシーツをかけた。

「お前、昼飯も食ってないな?」

「あっ… 忘れてました。」

と言うより寝てたんだけど…





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