彼が残してくれた宝物

だが、力なく笑う彼の体は確かに辛そうだ。私はベッドに上がり、樋口さんを起こすと彼を背中から抱き支えた。

「んっ?」

「私が支えますから、少しだけでも、口にしてください」

そしてスープをスプーンで彼の口へ運ぶ。

なんだか二人羽織みたい。ウフフ

「熱いですよ?」

彼はスープを2口、3口、口にしたところで、もういいといった。

やはり起きてるのはまだ辛いのだろうか…?

「もう少しだけ、食べれませんか? 食べないと元気になりませんよ?」

「いや、十分元気になったと思う。 暴れん棒のジュニアがビンビンだからな?」

「暴れん坊のジュニア?」

ビンビン?

「暴れん坊じゃなくて棒ね!」と言って樋口さんは自分の股間を指差した。

「………」

「背中に当たる君の胸に僕のジュニアが反応しちゃってさ?」

はぁぁぁ??

「元気に成りすぎて、ヤバイんだけど? ジュニアの面倒もみてくれる?」

股間の棒が元気に成りすぎて…?
良からぬ想像をして、私は赤面した。

「………バカ! エロオヤジ! 変態! 一生寝てろ!!」

私は樋口さんへ悪態をついて、慌ててベッドから飛び降りた。

顔を赤らめ、慌てる私の様子が面白かった様で樋口さんは、少し声をあげて笑った。

良かった。
もう大丈夫だろう…

一時はどうなるかと心配したが、元気な姿をみて安心したのか、涙が溢れてきた。

そんな私を見て、樋口さんは「おいで?」と、手を差し出した。

私は、彼のその手をとり、彼の傍らに座った。
すると彼は私の溢れる涙を己の唇で拭った。

「心配かけたね?」

「死んじゃうかと… 思ったんですからね?」

「うん… ごめんね? もう大丈夫だから、泣かないでくれ? 君に泣かれるのは辛い。」

彼はそう言って、私をぎゅっと抱き締めてくれた。
彼から伝わるものは、数日前の熱い熱ではなく、ドクッ、ドクッという生きてる証の鼓動だった。






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