彼が残してくれた宝物

「お帰り?」

「どうして…?」

「コスモスにお礼をしに来た。」

そこに居たのは樋口さんだった。

あの車…

もう、会うことは無いと思ってたのに…
どうして、会いに来たの?
どうして、私の家が分かったの?

桜井さんには、少し離れたコンビニで降ろしてもらったから、私の家は知らない筈なのに。

「お礼なら、桜井さんにお断りしました。」

「聞いてる。だから、改めて俺が来た。」

「お礼をしてもらうような事、してませんよ?」

私は、樋口さんを避けるようにして、玄関の鍵を開け部屋に入り、そしてドアを閉めようとした。その時、樋口さんは閉めさせない様に自分の靴を挟んだ。

「何してんですか!?」

「痛い。あー痛い。骨折れた! 痛いよー!」

なっなにこの人!?
悪徳金融の取り立て!?

「ちょちょっと! そんな大きな声出さないで! 言いがかりはよして! 樋口さんが、勝手に挟んだんでしょ? これくらいで折れるわけないでしょ!?」

「ん? それもそうか? でも、靴には傷が付いた?」

はぁ?

「弁償しろと言うんですか!?」

「弁償はしなくて良いけど、買い替えるのに付き合ってくれる? 挟んだお詫びに?」

「お詫び…に?」

「そう。お詫びに、今から買いに付き合って?」

なんか納得いかないけど、それで帰ってくれるなら、まぁいいか?

「じゃ、ちょっとそこで、待ってて下さい。 買い物した物しまって来ます。」

「へぇー、なかなかいい部屋だね?」

「なんで、入って来てるんですか?」

「ん? コスモスの部屋見たかったから?」

見たかったからって…
勝手に入って来ないでよ!
待っててって、私、言ったじゃん?

「………」

「コスモスって、名前は可愛いのに、部屋は普通だね?」

私は、コスモスって名前じゃ無いし!
あんたが、勝手にそう呼んでるだけじゃん!



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