彼が残してくれた宝物
私が樋口さんを睨んでいると、女将さんは、徳利とお猪口を私達の前に置いた。
そして、小鉢に入った牛蒡の味噌漬けを出してくれた。
「あっ牛蒡の味噌漬け!」
「お好きですか?」
女将さんの問い掛けに「はい!」と、答えた。
牛蒡の味噌漬けは、父方の祖母が良く作ってくれていた。
すると「樋口様は、牛蒡の味噌漬けが、お好きなんですよ?」と、女将さんが教えてくれた。
へぇーそうなんだ?
樋口さんを横目に見ると嬉しそうな顔をして、牛蒡の味噌漬けを食べていた。
「女将さんが作ったのがね? これをつまみながら、燗酒呑むのが好きなんだ。」と言う樋口さんに、女将さんが、「まぁ嬉しい事を仰って下さる。」と、言った。
「でも、樋口さん、今日は車ですよ? 呑んだらダメですよ?」
「タクシーで帰ればいいさ?」と言いながら、もうお猪口にお酒が入ってる。
まぁ、私は電車かな?
ここまで、随分走った様だし?
食事代払って、タクシーで帰るなんて、私にはそんな贅沢とても出来ない。
「車は?」
「桜井に取りに来てもらうよ?」
桜井さんに取りに来てもらうって…
二人はホントどんな関係なの?