彼が残してくれた宝物

私が樋口さんを睨んでいると、女将さんは、徳利とお猪口を私達の前に置いた。
そして、小鉢に入った牛蒡の味噌漬けを出してくれた。

「あっ牛蒡の味噌漬け!」

「お好きですか?」

女将さんの問い掛けに「はい!」と、答えた。
牛蒡の味噌漬けは、父方の祖母が良く作ってくれていた。

すると「樋口様は、牛蒡の味噌漬けが、お好きなんですよ?」と、女将さんが教えてくれた。

へぇーそうなんだ?

樋口さんを横目に見ると嬉しそうな顔をして、牛蒡の味噌漬けを食べていた。

「女将さんが作ったのがね? これをつまみながら、燗酒呑むのが好きなんだ。」と言う樋口さんに、女将さんが、「まぁ嬉しい事を仰って下さる。」と、言った。

「でも、樋口さん、今日は車ですよ? 呑んだらダメですよ?」

「タクシーで帰ればいいさ?」と言いながら、もうお猪口にお酒が入ってる。

まぁ、私は電車かな?
ここまで、随分走った様だし?
食事代払って、タクシーで帰るなんて、私にはそんな贅沢とても出来ない。

「車は?」

「桜井に取りに来てもらうよ?」

桜井さんに取りに来てもらうって…
二人はホントどんな関係なの?





< 39 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop