彼が残してくれた宝物
「コスモスも呑むか?」
「あっいえ、𤏐酒は苦手なんで。」
「女将さんの牛蒡の味噌漬けには、𤏐酒がよく合うよ? 少し吞んでみな?」
「じゃ、少しだけ?」
樋口さんに勧められ、少しだけ頂くことにした。
𤏐酒と一緒だと、牛蒡の薫りが一層引き立って、美味しい。
「樋口さん、1つ聞いても良いですか?」
「なに?」
「樋口さんは、お仕事何をされてるんですか?」
「秘密!」
「じゃ、樋口さんと、桜井さんとはどんなご関係ですか?」
「質問は1つじゃ無かったの?」
「だって、教えてくれなかったじゃないですか?」
「桜井との関係…か? そんなにコスモスは、俺の事知りたい?」
「少し気になっただけです。」
「じゃ、秘密!」
また、秘密…
結局何も教える気なんてないじゃん!
「樋口さんには、秘密が多いですよね?」
「コスモスも、秘密持ってるだろ?」
「………」
「人は誰しも、多い少ないは別として秘密持ってるものだ。」
「……そうですね?…」
私の秘密は大き過ぎる。
「でも、秘密ってものは、自分の為に持つ秘密と、他人の為に持つ秘密がある。」
「そうですね… 大抵は自分の為の秘密でしょうけど…」
「うん。 自分を守る為だろうね?
でも、守ってくれる人が現れたら、自分を守る為の秘密は必要ない?」
「そうかも知れません。
でも…守って欲しいと思う人にこそ、秘密は知られたくないと思います。」
お猪口4、5杯ほど吞んだだろうか?
なんだか、体が熱く浮いたように気持ちいい。
「樋口しゃん、あらたは、」
「ん? 何?」
「あらたは、かっこよしゅぎましゅ!」
「コスモスに言われると嬉しいけど、少し酔ったみたいだな?」
「よっれましぇん!」
「そろそろ帰ろうか?」
「まら、おるしたれてまれんから、かいれまれん!」
「こりゃー飲ませ過ぎたか? 女将、穴子ちらし、持ち帰りに頼めるかな?」
「はい。すぐ、ご用意します。」
「牛蒡の味噌漬けも頼むよ?」
お寿司… まだ食べます。
牛蒡の味噌漬け… 美味しいです。
んーなんだか、ふわふわしてる。
誰かが呼んでる。
誰?
課長…?
ごめんなさい…。