彼が残してくれた宝物
ミント・ジュレップ
聞いた住所を頼りに、お店を探した。
えーと、この住所だと…
この辺りだと思うけど…?
通りすがりの人達に聞いても、そんな店は知らないと言われ、それでも、私は探し続けた。
「あっここだ! 見覚えある。」
営業してるかな?
引き戸に手を掛けると、戸が開いた。
良かった。
「こんにちわ?」
「いらっしゃいませ。」
女将さんが、昨夜と変わらない笑顔で迎えてくれた。
「昨夜はご迷惑をお掛けしました。これ、良かったら召し上がってください。」
「あらあら、お気遣い頂いて、遠慮なく頂きます。」
「それから、これ職場からの帰りなので、水洗いしか出来なくてすいません。とても美味しかったです。」
女将さんへ穴子ちらしの入っていた紙袋を渡した。
「お口にあって良かったです。」
「あの…今日大将は…?」
「今、呼びますね?」
「あっいえ、お忙しい様でしたら結構ですので…」
「いえ、あの人も待っておりましたから、直ぐに呼びますので、こちらに座ってお待ち下さい。」
えっ?
私を待ってた?
私…もしかして昨夜何かやらかした?
それで、大将にお叱りを受けるの?
私は少し緊張しながら、そのまま大将が出てくるのを待っていた。