彼が残してくれた宝物
伊藤課長が、事故にあった場所に花を手向け、家に帰る事にした。
「良かったな? 自殺じゃなくて? 今夜は、絶対最後までするからな? 覚悟しろ?」
「桜…愛してる。 俺は君を離さない。」
その夜、徹さんは約束通り私を抱いた。
私も、彼の気持ちに応えるように、彼を受け入れ、彼のモノが爆ぜた時、忘れていた悦びを感じた。
「ねぇ?
もし、私が彼と結婚して、子供ができてたら…
それでも彼は、保育士になろうと思ったかな?」
「さぁな?」
保育士になろうと思ってなくても、彼の事だから、目の前の子供の命を助けたと思う。
でも… まだ、私の中には引っかかるものがある。
「どちらにしても、事故だったんだから、忘れよぅ……」
疲れているのか、徹さんはそのまま眠ってしまった。
その日以降、徹さんは毎晩私の家に通い、私を抱いた。
実質同棲状態になっていた。
「良いのかなぁ?」
「何が?」
「こんなに幸せで?」
「幸せになる事が悪いのか?」
「だって…。」
「まだ、あの事考えてるのか?」
「………」
「桜は何もしてない。罰を科す必要も無い! だろ?」
そう… 私は何もしてない。
彼にも… 彼の奥さんにも…
「もう、元彼の事なんて忘れて、桜は俺だけを見てれば良い。」
本当に忘れていいのだろうか…
奥さんの気持ちは…?
ある日、朝方に電話が入った徹さんは、慌てるように、部屋を出て行った。
そして、1週間後、仕事が忙しくなるから、暫く会えないと連絡があった。