彼が残してくれた宝物

次に目が覚めても、父に何度と相手の事を聞かれた。しかたなく、正直に相手は亡くなったと言えば、父はまた、おろせという。

「お父さんは、私を殺せるの!?
お腹の子は私の子なのよ!
父さんがなんと言おうと私は自分の子を殺せない! 父親がいないからって理由で、この子の命を奪う事は出来ない!」

「だったら勝手にしろ! 父さん達は何も知らんからな!?」

「分かった。 何があっても、父さん達には頼らない!」

その日から、父は顔を見せる事は無かった。
退院する日も、母一人が来てくれた。

「母さんごめんね? 父さんに怒られてるでしょ?」

「お母さんのことは良いのよ? でもね? お父さんの気持ちも分かってあげて? あなたが心配なのよ?」

「うん。 分かってる。
でも、どうしても、彼の子が産みたいの…。」

「…分かったわ。お父さんの事は、お母さんに任せなさい。 それから、あなたも意地を張らずに、子供の事を考えるなら、困った事があったら、お母さんに連絡するのよ?」

「有難う。」




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