彼が残してくれた宝物
家に帰ると、私の小さな恋人、5歳になる律輝と、奏輝が迎えてくれる。
「「ママお帰り!」」
「ただいま。二人とも良い子にしてた?」
「うん。良い子にしてたよ? あのねぇ? 今日は、じぃじぃと、ばぁばぁ、二人で、お迎えに来てくれたの。」
「そう? 良かったね?」
「でね? 帰りにね? お花屋さんに行った。パパのお花買いに。行ったの!」と、奏輝が話してくれる。
奏輝は私が帰ると、その日一日あったことを、事細かく教えてくれる。
「そっか? パパにお花買ってきてくれたんだ?」
「でも、じぃじぃねぇ? お花のセンスないんだもん!」と、奏輝は不満そうに言う。
多分、父の事だから、菊の花とかを選ぼうとしたのだろう。
「奏、無理言うなよ? じぃじぃはおじいちゃんなんだからさ! センス無いんだよ?」と律輝が奏輝を諭すように言う。
「じぃじぃは、おじちゃんじゃないよ? じぃじぃは、じぃじぃだもん!」
「はいはい。二人とも出かける用意して、じぃじぃと、ばぁばぁに、行ってきます。してらっしゃい?」
最後まで反対していた父も、流石に孫の顔を見たら、可愛くなった様で、家に帰って来いと言ってくれた。
お陰で、今は、両親に助けて貰いながら、二人の子供を育てている。
「桜、今夜は、外で食事してくるんだろ?」
「うん。 勝手言ってごめんね?」
「いや、奏や律が、喜んでるなら良い。わしらの事は気にしなくていいから、ゆっくりしておいで?」
ちょっと寂しそうな顔の父に、「今度の休みに、皆んなで動物園行かない? お父さんの運転で?」と誘ってみる。
すると、一瞬で顔が変わり、「よし、母さんに弁当作って貰って、皆んなで行くか?」と、笑顔になった。
こんな日が来るなんて、あの時は思ってもみなかった。
「父さん、いつもありがとう。」
「なんだ改まって? ほら、子供達が待ってるぞ? 早く行きなさい。」
「うん。 行ってきます! 律、奏、お待たせ? 行こう!」