彼が残してくれた宝物

「桜、俺は生きてる。 幽霊じゃ無いよ?」

え?

「桜さん、ご無沙汰しておりました。」

私の後ろから聞こえた声に振り返れば、そこに桜井さんがいた。

「桜井さん?」

「落ち着いてから連絡しようと、したのですが、引っ越された後で… 」と、桜井さんは申し訳無さそうに言う。

「え? じゃ本物なの?」

頷く徹に私は駆けより、抱きついた。

感じる。
徹の体温も、鼓動も。
幽霊じゃない!
生きてる! 徹が生きてた!

あ!?

抱きついていた私は、慌てて徹から離れ、仁王立ちした。

「樋口さん! これは、どういうことかしら!?
納得いく様に話してもらいましょうか!? 事によっては訴えるから!?」

徹さんと呼ばなかったのは、私の小さな報復だった。

「ああ、色々嘘ついていたから、先ずは、謝らないといけない。」

嘘…
徹が私についていた嘘…

徹は、「その前に」と言って、子供達の前に腰を落とした。

「ホント良く似てるね? えっと…まず、教えてくれる? どっちがお兄ちゃん? 名前は?」

「僕がお兄ちゃんの、奏輝!」

「俺は10分だけ、遅く生まれた、律輝!」

「奏輝と、律輝か? 良い名前だ。」

「ママが考えてくれたんだって!」

「そうか? ママが考えてくれたんだ?」

「奏輝と律輝に、頼みがある。 聞いてくれるかな?」

「うん! 良いよ?」と、言う奏輝に反して、律輝は、「話の内容によってだ!」と、生意気に腕を組んで言う。

「律輝はしっかりしてるね?」

「奏輝の体が弱い分、俺が、ママを守らなきゃいけないからな?」

「奏輝は、何処か悪いのか?」
心配そうに、私へ聞く徹に、
「そんなに心配するほどじゃ無いわ!」と、教えてあげた。

「そっか… 良かった。」
徹は胸をなでおろしたかのように、安堵の顔を見せた。




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