彼が残してくれた宝物
「律輝は、凄いな? 奏輝と一緒にママを守ってくれてたんだな? ありがとう。」
「そんな事、男なら当たり前だ!」
「そうか…当たり前か…? でも、その当たり前をパパはできなかったんだ…。 だから、律輝達は凄いよ?」
「じゃ、これからは、俺達と一緒にママを守るって約束するなら、パパの頼み聞いてやっても良いぞ?」
「ああ、ありがとう。 一緒にママを守るよ?」
「じゃ、頼み聞いてやる! でも、絶対、ママを泣かすなよ!?」
「律? パパにそんな言い方したらダメだよ?」
と、奏輝は、律輝を諭すように言う。
「奏は、黙ってろ! これは、男同士の話だ!」
「僕だって、男だよ?」
「二人とも有難う。 そこにいるおじさんは、桜井って言って、パパのお世話をしてくれてる人なんだ。 ママと話す間、下のコスモス公園で、桜井と、遊んでやってくれるかな?」
慎重派の奏輝は、不安そうに私の顔を見た。
「大丈夫。少しの間、桜井さんと一緒に居てくれる?」
「奏、俺がいるから、大丈夫だ! 心配すんな! こんなじぃさん、何かしたら、俺が蹴り入れてやるよ!」
「律輝! 桜井さん、すいません。律輝は少しヤンチャですが、根は本当に優しい子ですから、少しの間二人をお願いします。」
「畏まりました。ヤンチャは父親譲りですかね? 」と、桜井さんは、そう言って、徹を見た。
「はいはい。俺もヤンチャでしたよ!」
恥ずかしそうに笑う徹の顔があの日々を思いださせる。
「で、話は?」
「こっちで話そうか? 彼奴にも聞いて欲しいから?」
そう言って、徹は自分のお墓の前まで私を連れて行った。
「ここは、俺の弟の墓なんだ。」
「えっ? 樋口 徹って…」
「樋口 徹は、弟の名前。 俺の本当の名前は、樋口 誠。」
「樋口 誠?」
「徹と俺は双子で、徹はピアニストに、俺は親父の会社を継いでいた。俺達は心臓が弱くて、いつもニトロが手離せなかった。狭心症ってやつだ。運良く、生きてこれてたけど、徹の容態が少し悪くなり、手術を受ける事になった。この辺の事は、桜も多分知ってるだろ? 随分ニュースやってたみたいだから?」
私はただ、頷いた。