彼が残してくれた宝物

「俺が居た部屋は、徹が借りてた部屋だ。 あの日… 桜にあったあの日、俺は、徹の夢を叶えてやろうと思った。」

「夢?」

「ああ、俺達は子供の頃、ここで、会ってる。」

えっ?

「真由子と一緒に四人で、下のコスモス公園で遊んだんだ。覚えてないか?」

コスモス公園で…
そう言われたら…小学生に上がったばかりの頃、父方のお墓参りに来て、同じ年頃の子達と、一度だけ遊んだ覚えがある。
その時も、名前を聞かれ、公園の名前と一緒だと言われ、何度も “コスモス” って笑われた。

「あの時の… えっ? ちょっと待って! 真由子さん…て? まさか?」

「そう。君の知ってる。 正確には名前を知ってる、伊藤真由子だ。」

嘘…
私が真由子さんに会っていた?

「真由子と俺達兄弟は従兄妹なんだ。」

「じゃ、私の事を初めから…?」

「知ってた。 真由子の旦那と不倫してたのも。」

「どうして… 知ってたら、どうして言わなかったの? どうして攻めなかったの?」

「真由子の意志だったから…。」

「真由子さんの?」

「ああ、それから、徹の初恋を叶えてやりたかった。」

「徹さんの初恋?」




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