彼が残してくれた宝物

「では、こちらで適当に握らせて貰います。坊ちゃん達には、山葵は無しの方が宜しいですね?」
と、大将が言うと、伸君が
「お子ちゃまは無しだよな?」とからかって言った。

それに対抗しようと思ったのか、
「俺は、山葵いれて!」と、律輝が、言い出した。
「え? 律輝、山葵大丈夫? 辛いよ?」

「いる!」

「大将、奏輝も律輝も、俺の代わりに、桜を守って来た立派な男なんだ。お子ちゃまじゃない。山葵入れてやってくれ? で、山葵の好きな伸には、シャリの代わりに山葵で、握ってやってくれるか?」誠さんが言うと、大将は「畏まりました。」と、笑った。

「大将ー 冗談ですよね?」と心配して伸君が言うと、誠さんは本気だ。と言う。そして、
「子供心が分からない奴は、保育士失格だぞ?」と、言った。

「奏輝、律輝、ごめんな? 先生が、悪かった。」

良いよ。と、言う二人の前に、大将は一人前ずつ握り寿司を、「山葵いり、おまち!」と置いた。

初めて見る、綺麗なお寿司に子供達は、目を輝かせ、律輝は、マグロから、手をつけた。
だが、奏輝は、一向に手をつけようとしない。

「奏どうしたの? 食べないの? 山葵は少ししか入って無いよ?」と、ネタを外して見せてあげた。

「だって…じぃじぃと、ばぁばぁ…食べれないもん。僕達だけ、本物のお寿司食べて…」

奏輝のその言葉に、律輝の手まで止まった。

「大将、折り二人分頼める?」と、誠さんは頼んでくれた。

「奏輝、律輝。 心配しなくたも、お土産で持って帰れば良い。同じ物を握って貰うから心配しなくても良いから、沢山たべな?」

誠さんの言葉に、安心したのか、子供達は美味しそうに食べていた。




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