彼が残してくれた宝物
さっきまでの余裕のあった誠とは違い、タクシーの中では、男性関係や会社での事、特に木場さんの事を聞いて来た。
問い詰めたところ、伸君が私に気があるとかで、その上木場さんもと聞いて焦りが出て来たと言う。
「バカねぇ。
伸君も木場さんも、誠と比べたらガキンチョよ?
お相手になりません!」
「ほんとに?」
「当たり前でしょ?
5年も誠を想って居たんだから…
今更、他の人なんて考えられない」
「なら良かった…」
「それより、父の事は覚悟しといてね?」
「ああ、殴られる覚悟はしてる!」
殴られる覚悟って…
明日の、誠の仕事に差し支えなければ良いけど…
緊張しながら玄関の扉を開けると、何故か玄関には奏と律を送ってくれた、伸君と桜井さんの靴があり、中からは大きな笑い声までが聞こえるのだ。
何事かと中へ入ってみれば、既に私達の結婚のお祝いを始めて居たのだ。
「ちょっと、何騒いでるのよ?
近所迷惑よ!」
「何言ってるんだ!
今夜はうちのひとり娘の祝い事じゃ無いか!
朝まで飲むぞ!
おー婿殿、こっちへ来て飲みやがれ!」
もー誠は、婿殿じゃないから!
桜井さんが、私の両親に前もって一通り説明して居てくれたお陰で、誠は殴られることもなく、結婚の承諾は貰えた。
そして、誠は父に付き合い朝まで飲み明かしました。勿論、桜井もです。
(あれ、伸君いつ帰ったのかしら?)