彼が残してくれた宝物
奥さんの葬儀が終わった夜。彼から会いたいと連絡があった。
愛する妻を亡くし、寂しさを私で埋めようと思っての事だろう。
だが、私は会えないと断った。
それからも、彼は何度と連絡をくれた。
そして、彼は奥さんの四十九日が過ぎたら、結婚しようとまで言ってくれた。
だが、彼に対する奥さんの深い愛を知ってしまっては…
私は、奥さんを超える愛を、彼に捧げる事は出来るだろうか…?
何度も自問自答した。
結局、彼の申し出を断り、私は、会社も辞めた。
会社を辞めて半年が過ぎた頃、街で偶然かつての同僚に会い、彼が交通事故で亡くなったと聞かされた。
そして、自殺ではないかと言われた。
奥さんを亡くし弱っていたから、自ら道路に飛び出したのではと、会社で噂になった。とも教えられた。