花魁〜撫子達の葛藤〜
***真梨子side***


(はー緊張する。さて、勝つか負けるか...)

真梨子はドキドキと鼓動を鳴らしながら会場へと向かった。

(亜矢ちゃんは余裕で勝っちゃうし...私も勝たなきゃ、亜矢ちゃんと一緒に百人一首部で頑張るんだっ!)

「「宜しく御願いします」」

そして始まる二試合目。
不戦勝勝ちした真梨子にとっては...一試合目。

「___なにわづにさくやこのはなふゆごもり___いまをはるべとさくやこのはな」

腰を少し浮かせて、体勢を整える。

「___いまをはるべとさくやこのはな」

右手をしっかり畳につけて、競技線のスレスレまで頭を突き出す。

「___ゆうされば」

「よっ!」

パッと花吹雪のように飛ぶ札。
相手も驚いて、手も出せていない。

本当は『ゆう』の『う』で払わなければならない札なのに、真梨子は『ゆ』の母音で払った。

まるで、次来るのが『う』だと、分かっていたかのように...。

「うしっ、まずはいっちまーい!」

真梨子は飛んで行った札を取りに行き、ニッと笑った。

「...勝ってやる」

真梨子はそれから、何枚か取られながらも、確実に差を広げていった。

そして______。

「「ありがとうございました」」

17枚差で、勝利したのだった。


(きっと札があたったのは、運だよね。
出札をカンで飛ばしてよかった...)

でも真梨子は気付いていない。

自分の耳が、しっかりと次の音を捉えていたことに。

この勝利は、運などではないことに。
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