花魁〜撫子達の葛藤〜
「亜弥ちゃんっ!お部屋行こ!」

真梨子がそう言ったので、しぶしぶリビングを後にした。

***真梨子の部屋にて***


「亜弥ちゃん、試合とるんじゃないの?」
「え〜...でも、30分じゃ出来ないでしょ?」

亜弥はブウと口を尖らせ、抗議した。

けれども真梨子は、全く動じない。

「亜弥ちゃんは試合したくないわけ?」
「ゔっ...、したいけど...」
「疲れてる、とか、通用しないからね!」

真梨子はそういうと、早速札を広げた。

「前は3枚差で負けちゃったからね。私、次こそは亜弥ちゃんに勝つっ!」


亜弥には真梨子が、メラメラと燃えているように見えた。

「...はいはい、分かりましたよ!

勝つとかいってさ、勝たせないから」

亜弥は札をガシャガシャとかき回しながら、真梨子の気持ちを逆なでした。

そして、13分間の暗記時間が始まる。

その後、2分間の素振りが許される時間。

それが終わって初めて、試合が開始される。

亜弥は暗記をしないと、全くといっていいほど札が取れなかった。

先輩の中には、試合中に札を憶える,という人もいたけれど、亜弥にはそれが出来なく、さらにお手を恐れてしまって、取れないのだ。
< 26 / 54 >

この作品をシェア

pagetop