花魁〜撫子達の葛藤〜
「仁奈ちゃん、ごめん。今日私帰るね」
「分かった、バイバイっ!」

(はあ...良い部活無かったな。
やっぱ帰宅部か...)

そんなことを考えながら、亜矢は廊下を歩いていた。

すると___。

「たごのうらに___」

シュッ、バンッ...!!!!

空を切るような音が、亜矢の目前を駆け抜ける。それと共に、

『ふしのたかねにゆきはふりつつ』

と書いてある少々厚めの札がハタリと足元に落ちた。

「ここも...何かの部活...?」

少し興味を引かれていた亜矢は、恐る恐るとではあるが、札を拾った。すると、

「ありがとっ!新入生」

透き通るような白い肌に紅色に染まった艶かしい唇を持つ、美しい少女が駆け寄ってきて、亜矢から札を取り上げた。

慌てて亜矢はその少女を引き止めた。

「あのっ...!」
「...ん?」
「これって...何部ですか」

少女は一瞬、キョトンとした顔をすると、すぐにアハハと笑った。

「百人一首。知ってる?小学校とかでやったかな。」

ひゃくにんいっしゅ...。聞いたことはある。

確か、下の句が書かれた札を取る、競技かるただった気がする。

亜矢はあまりかるたについては詳しくなかったものの、もう既に、先程の少女の取りに心奪われていた。
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