それはとっくに恋だった
「私、お父さん似なの。」


美人の母じゃなく、イケメンの父に似てしまった。


それは、真尋のコンプレックスだったようだ。



聞いた話によれば、中学まではよくメンズモデルのスカウトにあっていたようだ。



確かに、出会った頃の真尋は、男女とか言われることもあった。しかし、それは男顔というより、中性的な顔立ちに長身だったからだと思う。それに、真尋の性格は、穏やかで気配りができて、俺が知っている誰よりも女性らしい。



出会ってから10年以上たった今、真尋はどっからどう見ても綺麗なお姉さんだ。



そして、真尋のお父さんは、寡黙な人だと聞いていた。だから、真尋のお父さんは、少し無口な、でも穏やかな優しい人を思い描いていた。



なのに、今目の前で俺を見つめるその人は・・・



ソファーに座っていてもわかるほどの長身。白髪の混じった長めの髪はきれいに後ろに撫でつけていている。そして、顔は、切れ長なのに二重。通った鼻筋に・・・まぁ、何ていうか恐ろしくかっこいい。



たぶん、男から見ても、女の人から見てもかっこいいそんな顔だ。


そんな人が、真顔でジッとこっちを見ている。


何という威圧感。



いや、似てないわけじゃない。確かに似ている。


でもね、勝手に想像したのと違いすぎる。



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