それはとっくに恋だった
真尋のお母さんが、お茶を運んできてくれる。


それを飲む余裕すらない。


ここからが正念場だ。


俺はぐっとこぶしを握った。



「本日は、真尋さんとの結婚のお許しをいただきたく参りました。

 ですが、その前に、ご報告しなければならないことがあります。」


俺の言葉に、お父さんの表情が動く。


「真尋さんのお腹の中には僕のこどもがいます。」



ガシャン!!



台所のテーブルの方から音がする。


反射でそっちを見ると、そこにはこれまた恐ろしくイケメンのそして背の高い若い男がいた。


お父さんの威圧感ですっかり忘れていたけど、この人が真尋のお兄さんだ。


驚きの表情でこちらを見ている。



その横で、お母さんが淡々とお兄さんのこぼしたお茶を拭いている。
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