それはとっくに恋だった
「何のことかわからないでしょ?でもね。私は覚えてるわ。

 もう気にもしていなし、怒ってもいない。でも覚えてる。

 あなたが色々言いたいのは私にだってよくわかるわ。でも、それを言ってしまうと、真尋はもう私たちを頼ってくれなくなるわよ。颯太君だってそれを心配してさっきみたいなこと言ったのよ。あなただって真尋の性格よくわかってるでしょ?」



前半部分は何が何だかわからない様子のお父さんだったが、真尋の性格はよくわかっているようで。後半のお母さんの言葉を聞いて口をつぐんだ。


お父さんはしばらく何か考えた後、俺を見ながら言った。



「私はね、忙しくて家にいられない父親だった。

 休日出勤や出張も多くてね。小さいころはそれでも休みを見つけてはいろんなところに連れて行った。でも年頃になるとそんなこともなくなって。真尋との接点はほぼない時期もあった。

 とにかく心配だったよ。変な男に引っかかってんじゃないかとかね。年頃の娘を持つ父親なら誰でも心配することなんだろうが、何せ私は家にいなさすぎた。とにかく心配だった。

 そんな時、妻が言ったんだ、真尋に仲の良い男の子ができたってね。」


それってまさか・・・



「君だよ。颯太君。」
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