それはとっくに恋だった
「何か、ここまできて俺がどうこう言える雰囲気じゃなくね?」


真尋のお兄さんが言った。


「あら、千尋、何か言うつもりだったの?よしなさい。可愛い姪か甥が生まれるのよ?

 それに、あんたはどうなってるの?ほら、誰ちゃんだったかしら、中学から一緒の・・・」



「かーさん、黙って。」



お兄さんは、立ち上がって、真尋に近づいてきた。



近くで見るとやっぱり大きい。たぶん、180はあるだろう。



「ったく、しゃーない妹だな。幸せになれよ。」


そう言って真尋の頭をグリグリと撫でた。


髪がぼさぼさになったけど、真尋はされるがままで、小さく「うん」と言った。


「颯太君だっけ?まぁよろしく頼むわ。」


「はい。」


そういうとお兄さんは満足げに笑った。


その笑った顔がすこし真尋に似ていた。
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