それはとっくに恋だった
すっかり暗くなった真尋の実家からの帰り道、駅まで真尋と手を繋いで歩く。


あれから、お兄さんとお父さんの晩酌に付き合わされて、俺はほろ酔い状態だ。


「そういえばさぁ、おかーさんの言ってた『ただのマル』って何だろーな?

 真尋知ってる?」



「あぁ、あれ。お父さんが初めてエコー写真見たときの感想だって。」



エコー写真ってなんだっけ?ほろ酔いの頭で考える。


「そういえば、颯太も反応薄かったよね?」


そう言われて焦る俺。


ヤバい、エコー写真が何かど忘れしちゃった!!


エコーエコーエコー・・・ただのマル?


あ、お腹の子の写真だ!



「いや、これが人になるんだなと思うと感慨深かったよ・・・」


「ホントにそんなこと思った?」


「うん。思った思った!」


「ふーん。」


真尋は納得言ってない顔だった。


まぁ、正直、何と反応していいかわからなかったのは事実だ。


『ただのマル』と言ったお父さんの気持ちもわからなくはない。




吐く息が白い。


星が見え始めた真冬の道を真尋と手を繋いで歩く。



内心思った。




おかーさん、あのタイミングでその話はずるくないですか?



俺は助かったけど。
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