榛色の瞳を追って

讃美歌と山口さん

うちの父は牧師なので、家族も礼拝の準備に駆り出されることが少なくありません。 今日も母と兄と一緒に、少し早い時間に家を出ました。 元々は教会に住んでいたそうですが、子どもが多くなったので近所に家を建てたそうです。

「ちさ」

「何ですか?」

兄に呼ばれました。 こんな声色ということは、大抵…。

「最近、早天祈祷会に来ていないだろう」

「そういえば…」

早天祈祷会。 月曜日から土曜日に実施される、信者さんやその家族の悩みが解決するよう祈る会のことです。
基本的に参加者全員で祈ることですし、悩みがないとは言いませんが、情けないことに体調を崩して臥せっていることが多く、早朝の祈祷会の参加は難しいのです。

「近所の人に『ちーちゃんは今日も見ないわね』と言われて、誤魔化すのも辛いんだぞ」

「……」

二人の兄さん、姉さんたちがいた頃では絶対言われないような内容に、私は何も言い返すことができませんでした。 普通の牧師は早天祈祷会に出ないだけで厳しく言わないだろうと思う今日この頃です。
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