榛色の瞳を追って
南山手の、陳さんの家のある丘を下って中程にある商店街に出たのはいいのですが、居留地に海苔屋などありません。 私は歩き慣れている商店街の隅までしっかり見てきましたが、宗一さんの目当ての物は見当たらないのです。

私は、途方に暮れていました。

「どうしよう、居留地を出たらご飯が冷めてしまう。 でもお海苔が買えなかったら宗一さんに何言われるか……」

まだ働き始めてまもないのに、私は一日一回は必ず彼を怒らせてしまうのです。 勝手に部屋の掃除をするな、そもそも部屋に入るな…。 特に女性に対しては辛辣な気がします。

「お海苔ってどこで買っているんだろう…」

私の家は駅の近くのお店で買いますが、宗一さんが同じお店で買っているかは分かりません。
でも買わないよりは買ったほうがいいので、居留地を出て駅の方に向かいました。
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