白くなったキャンバスに再び思い出が描かれるように
街に、イルミネーションが灯り始めた。その姿はこの街の姿を意を決したように変え、今までと違う世界を作り出す。
街路樹は夏の葉を淡い光の粒に変え全体にまとう。
続く光の街路樹に、ビルに描かれた光の絵。そして特設に設置された大きなモミの木。
光に包まれ、輝き、人の心を魅了した。
その中に漂う。寂しさ……人の心にしまわれている穢れと言うものを物語っているように。
クリスマスまでもう少しと言った日に、その連絡は来た。優子から。
「ハァイ達哉。元気にしている」
「ああ、久しぶりだな優子」
「そうね。あなたが来ないから大変よ。掃除に洗濯。早く来てよ」「行ったらそれで済まそうにないんだけど……」
「当たり前じゃないの。そんな事」
相変わらず、あの契約は続行されているみたいだ。
「ところでどうした」
「あら、何かなきゃ電話しちゃいけないの」
「もったいぶるな」
優子は電話口でふふふ、と
「決まったわよ大賞。さっき知り合いの編集から連絡来て」
「え、ほんと。で、で……どうだった」焦る気持ちを隠せなかった。そして優子は
「残念。選考止まりだったわよ……」その言葉を訊いて一気に気が抜けた。
「そうか……」
期待していたが、そんなにうまい事行く訳がないと思っていた。
「あら、随分と落ち込んだ声ねぇ」
「ああ、でもいいんだ。多分だろうなって思っていたから」
「そっかぁ。ほんと諦めが早いわね」
「そうだよ。諦めが早いのも仕事の内。それってお前が言った事じゃないか。それにもう次の小説に取り掛かっているからな」
優子はすぐに声を返さなかった。次に
「そっかぁ。でもその小説書くの少しの間止めないとね」
「どうしてだよ」その言葉に聞いた。