白くなったキャンバスに再び思い出が描かれるように
 文芸サークル。正確にこの大学では文芸部と言う位置にある。

だが、文芸と言えばタダでさえ肩ぐるしいイメージがある。部活となればなおさらだ。

そんなイメージを和らげ、少しでも興味のある部員を獲得するために、3年前から表向きサークルと銘打っているらしい。だから、出席についてそんなに厳しくはない。


 それに、サークルと名乗る事でそれなりのメリットもあるらしい。

 一部非公式的な活動もしている為、インカレサークル(他の大学から参加して活動を共にするサークル体制)的な部分もある。もっぱら来るのは自校に文芸部がない奴らばかりだ。


 その影響もあり、ここ数年文芸小説とはかけ離れた、ラノベ小説がこの文芸サークルの花形になりつつある。

 時代の移り変わりと共に、その像(かたち)は変わりつつある。


 「おっせーじゃねーか亜咲」

 「悪りぃ、講義がこの時間までだったんだ」

 僕の隣で話しかけてきたのは、同期の「宮村 孝之(みやむら たかゆき)」彼は経済学部と学部は違うが、この大学に入学した頃からかなり親しくしている。いわば親友とも呼べる仲だ。


 そんな宮村も実を言う文学青年で、中学の時から小説の執筆活動をしている。

 宮村は文学青年ではあるが、その性格は明るく社交的で人見知りを感じさせないタイプ。

しかもスポーツ万能、今でも各部から誘いが来ている。だからだろうか、彼は顔が広い。色んな人との人脈を持っている。合コンや飲み会となれば彼のリーダーシップは発揮される。

 そして彼が執筆する小説は、異世界物が支流でライトノベル向けの小説をよく執筆している。

 だからかも知れない。僕の執筆する恋愛小説の感想をいつも「こんなもんだろう」と返すのは。

彼は小説の中では、あまり恋愛には興味が無いらしい。

 それでも、現実に彼には可愛い彼女がいる。


 「訊いたぜ亜咲。お前今日、教育学部で女探していたそうじゃないか。ようやくお前にも春が来たか」
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