白くなったキャンバスに再び思い出が描かれるように
沙織の両親***
夏休みもあと残すところあとわずかとなった日。宮村と居酒屋で飲んでいた。今日は愛奈ちゃんと沙織そしてナッキと3人でお食事会と銘打って3人で食事に出かけた。
愛奈ちゃんのお腹も物凄く順調ですこし目立つようになってきた。体調も思いのほか安定し、つわりもほとんど気にならない様になっていた。
でも当の宮村はあれ以来「俺父親になるんだ」と僕に連呼する始末だ。しかも愛奈ちゃんの話になると、あのソース顔がデレッとしてまるでお多福のようになる。そんな顔を僕はいつも笑ってやった。
僕の方は小説も順調に書き進んでいた。
もう沙織も覚悟を決めたか、それとも今までいろんなことを暴露させられたせいか、姉貴のように僕の前ではあけっぴろげ、いや沙織のお母さんのようにオープンな性格をあらわにしたのか、高校の時に付き合っていた彼氏の事や彼との営み?と言うべきだろうか、こんなSEXしてたなんて平然と言って僕の方が赤面するほどだ。
いかに、いずれ母になる女と言う生き物は、底知れず強いものだと思ってしまう。
逆に僕は美野里の事を根掘り葉掘り沙織に訊かれる。
それこそ、美野里とどんな付き合いと言うか、どこで愛し合ってたとか、そしてどんなSEXしていたなんて遠慮なしに問い詰めてくる。もう、沙織にとっても美野里は僕の一部として見ているようだ。出来れば最近は少しジェラシーを表に出してもらえるとありがたいのだが。
そして僕はある日、沙織の家に招待された。沙織のお母さんが一度は家に連れてくるようにと沙織に強く願ったらしい。
その後で、どんなにいい男か品定めしてやると、好みだったらこの体捧げますわ。なんて冗談交じりに言っていたらしい。
その日は沙織の家で一緒に夕食を食べた。
沙織は手ぶらでいいよ。そんなに気を遣う家じゃないからと言ってはいたが、やはりそこは何とか。バイト先のカフェで焼くパイをワンホール恵梨佳さんに注文しておいた。
取に行ったとき、恵梨佳さんとそのときいたメンバーから「健闘を祈る」と戦地に赴く兵隊の様に送り出された。実際その通りかもしれない。
沙織の家に着きインターフォンを押すと、沙織の声がして玄関の扉が開いた。そこで沙織と沙織のお母さんが出迎えてくれた。