白くなったキャンバスに再び思い出が描かれるように
作家有田優子***
長かった夏休みが終わった。秋期の大学が始まった。
3年の秋期、僕の取らなければいけない講義は春期から比べれば少なくなっている。その分バイトと小説の執筆に時間がさける。
そして沙織とナッキは、教育実習の期間に入っっていた。実際の学校に行って実際に生徒を相手にして教師の職を学ぶ。彼女たちにとっては必須なことだ。
そしてうまい事に、沙織とナッキが行く実習の学校は、自分たちが卒業した高校だった。特にナッキはアーチェリー部の指導も頼まれていた。
そして沙織は自分の専攻する古典学を担当の教師と実習する。この学校の国語系の教師が少ないことが沙織にとって優位になっていた。
そして、文芸部部長の有田優子に僕は呼び出しをされていた。
「亜咲君、ずいぶんとご無沙汰じゃない」
「そうですね。いろいろと忙しくてあまり顔を出せないでいましたから」
「そんなに忙しかったらあなた小説ほとんど書いていないでしょ」とかまをかけるように
「いや、それなりに書いていますよ」
部長はふうんと言った表情で
「今日はここ誰もいないんだけど。持ってるんでしょあなたの事だからメモリーステック」
「それは持ってはいますけど」
「それじゃ貸しなさい。読んであげるわ、批評付きでね」
そっと僕の方へ彼女は手を刺し述べていた。
「でも、そんなまだ途中なんですよ」とは言ったもの本当は二人で描いたストーリーを見られることに抵抗感があった。
「あら、あなたその小説あの大賞に応募するんじゃなかったの。それこそ大勢の人に読まれる小説なのにそんなに引っ込めてどうするつもり。今更恥ずかしいなんて言わせないから」
なんか部長の言葉は、別な意味で僕を誘っているようにも聞こえる。でも、部長が言うことも確かだ。初めからこの小説は大賞に応募しようと書いた小説でもある。
「解りました」そういってメモリーステックを部長の手に渡した。
「うふふ、それでは読ませて戴くわ。あ、その間、あ・れよろしくね」
彼女の指指す方には印刷された書類の山があった。
つまりはそれを一枚一枚合わせろと言う事の様だ。
「仕方がないやるか」
その間部長はノートパソコンにメモリーステックを差し込み僕の描いた小説を見開いた。