白くなったキャンバスに再び思い出が描かれるように
お互いの気持ちに***

 沙織の教育実習が終わり、2週間が過ぎた。

 僕は部長から借りたあの榊枝都菜が書いた本を読み終わっていた。そして、部長のいうヒントとは何かと探りながら読んだ。でも彼女の描く小説は僕の心をあの時の様に惹き込んでいった。美野里の小説を初めて読んだ時の様に。

 しかもその内容は、ちょっと変則的な、いや相当力がないと描けないたった一人のラブストーリー。 
 
 27歳のOLが婚期を逃してしまったように、今まで付き合った彼と別れてしまう。悲しみ落ち込み、とてつもなく襲う寂しさにさいなまれながら彼女はいろんな人の恋を想像してしまう。

悲しみに襲われる時、寂しさに襲われる時彼女は妄想にふけった。こんな恋があってもいいんじゃないかと。それを短編で一話づつまとめたものだった。

間奏に彼女は現実に自分の勤める会社や、街中でその妄想のネタをかき集める。その時に知る人の汚さを。その汚さ醜さを榊枝都菜は躊躇することなく、そのまま言葉を曲げず書き表していた。


 「人の心は本来醜く汚く穢(けが)れているもの。そうやって人間は生まれて来たのだから。

だから幸せをむさぼるように奪い取るのだ」と、そしてその彼女は次第に人の醜さを知りそれを自分に映し出していた。本当は自分が一番醜いんだと、そして辛いことがあれば妄想に走り現実を見ない自分に気が付く。


 彼女は会社を辞めて新たな自分探しの旅に出た。


 そして、最後に明かされた。この物語は病気で苦しみながら、高校生だった少女がベットの上で想像する世界だった。後少しのこした時間の中で……


 人の醜さや穢れをOLの心を通して描写し、その穢れを最後ベットの上で一人で受け、耐えながら生命の火を消してしまう。

 こんな人間臭い人の不の心を集めたような、切なさを感じていた。

 僕はもう一度自分の書いた小説を見直そうと、また動き出した。

 そして沙織も、教育実習が終わった後、自分の向かう教師と言う職がどれだけ大変で難しく、そして素晴らしいものであるかと感じていた。 


 今僕らは共に自分の道を進むために、新たな展開を見せようとしていた。

 沙織はあれからあまりここに来なくなった。

 自分の目指す教師と言う職に向かう為、勉強をしだしたからだ。

 ある日、僕と一緒にここで夕飯を食べながら
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