白くなったキャンバスに再び思い出が描かれるように
 沙織の顔はもうぐちゃぐちゃ。涙に鼻水、髪は乱れるは。でも、でもその表情は今まで見た事が無い位、幸せな表情だった。


 そして、涙と共に肩を揺らす嗚咽で声にならないまま頷いた。



 そして「達哉ぁっ」と叫びながら。大泣きした。



 それを傍でずっと見守っていた沙織の両親も目が濡れていた。

 佑太は、薬指で鼻をヘンとやって、晴れ晴れしい顔をしていた。

 やっぱこいつは、僕らより一枚も二枚も上手のような奴だった。



 
 そして歪み消え始めたキャンバスに再び思い出が描かれた。
 だが、一度歪み始めたそのキャンバスは、もう……



 
 
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